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専門情報:VRA

検査の実際と標準データ

 

 

 

検査の実際

~検査アシスタントの役割~

VRAでは一般に、検査者と検査アシスタントが協力しながら2人で検査を行います。しかしながら、日本では2人で検査を行うことが難しい場合も多いため、検査者1人で検査を実施できる方法についても説明します。

 

検査アシスタント

  • 検査アシスタントは、玩具、絵本、ぬいぐるみなどを使用して被検児の気を引き、検査音を呈示する前に被検児が正面を向いているようにします。この
    とき、被検児の興味を引きすぎないように気をつけます。
  • 被検児が上手に反応した場合は、笑顔や大きなジェスチャー、声掛けなどで褒めて勇気づけ、検査を続けることを促します(社会的強化)。
  • 検査音が呈示されていても、行動によってそれを被検児に気づかれないように気をつけます。
  • 保護者が防音室内にいる場合は、保護者が被検児に合図を送るような行動をしていないか気を配ります。
  • 検査者と検査アシスタントは会話できるように無線でつないでおきます。
  • 余計な音を立てて検査の邪魔をしないよう気をつける必要があります。

 

検査者のみの場合

  • 検査アシスタントがいなくて、検査を1人で実施する場合は、はじめに検査環境を整えます。オージオメータは検査室内に設置し、検査者も防音室内に
    位置し、検査者と検査アシスタントの両方の役割を果たす必要があります。
  • 検査者の最適な位置は、被検児の正面となります。
  • オージオメータの操作を被検児に見られないようにパーティションを使用するなどの工夫も必要です。

 

 

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検査の実際

~検査手順~

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1 準備

音の呈示前に玩具やぬいぐるみなどで気を引き、被検児の顔が正面に向いている状態にします。

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2 条件付け

被検児が十分に聞こえるレベル(60~70 dB HLかそれ以上)で1 kHz、または2 kHzの検査音を音場スピーカーから呈示します。呈示後2~3秒以内に被検児が音の方向に振り向いたら報酬として強化子(視覚刺激)を2~3秒与えて条件付けします。

被検児が音の方向へ振り向かない場合は、音と視覚刺激を同時に呈示し、音源の方向を指さしたりして、そちらを見るように促します。何度か繰り返し実施して、音を先に呈示し、振り向き反応があった場合に報酬として視覚刺激を与えます。上手にできたことを褒めて被検児を勇気づけます(社会的報酬)。

 

 

 

3 検査開始

条件付けで最低2回連続で振り向き反応が得られたら、本検査を開始します。素早くレベルを下げながら(例えば20dB下げるなど)、振り向き反応が得られるかどうかを検査します。反応がない場合はレベルを5dB上げ、反応が得らた場合はレベルを10dB下げます。これを繰り返し行い、3回のうち2回振り向き反応が得られたレベルを最低反応レベル(MRL)、つまり閾値とします。

 

 

4 呈示方法の例

開始周波数や検査周波数の呈示順序は被検児の状況に合わせて調整します。例えば、高度難聴が予測される場合は低周波数から開始したりします。一般的によく実施される検査周波数の呈示順序は、以下の2種類です。

  • 2 kHz → 500 Hz → 4 kHz → 1 kHz
  • 1 kHz → 4 kHz → 500 Hz → 2 kHz

できる限り、低周波数と高周波数をそれぞれ1周波数は検査できるように考慮して順序を決めます。インサートイヤホンを使用する場合は、左右交互に検査し、両耳の反応を取れるように工夫します。

 

 

5 いろいろなコツ

検査中は、検査音の呈示間隔が一定にならないように気をつけます。長いポーズをとると擬陽性反応がないかどうか確認しやすいでしょう。音場スピーカーによる音の呈示で反応が得られるかを先に確認してから、次いでインサートイヤホンやヘッドホンによる左右個別の閾値検査に移行します。

 

 

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VRAの応用

  • 音場で補聴器装用下における補聴効果測定や、人工内耳から音を出しながらVRA装置を用いて反応を測定することも可能です。
  • インサートイヤホンの先に補聴器のイヤモールドを装着してVRAを実施することもできます。
  • 遊戯聴力検査の一つとしてBOAやCORのようにも応用が可能です。

 

 

 

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~コツと注意事項~

  • 検査の前に強化子が機能することを確認しておきましょう。
  • 検査の最後のほうで、最初に得た閾値よりも5dB大きい音を呈示し、被検児の反応を見て、後半の検査の信頼性を判断することができます。
  • ひとりの子どもにとってやりがいのあることが、他の子どもにとってはやりがいのないこともあります。つまり、視覚的な強化子を好む子どももいれば、社会的な強化子(拍手、笑顔など)を好む子どももいます。
  • 必要なときに使用できる、別の強化子を「予備」として持っておくと便利です。子どもが強化子に慣れ始めたり、関心がないように見えたりするとすぐに、社会的強化(拍手喝采など)を開始して協力を長引かせる場合もあります。

 

◆VRAがうまくいかない代表的な理由

  - 課題が難しすぎる(発達遅滞)

- 十分に興味がわく課題でない(精神年齢が高い)
- 聞こえない音(閾値より小さい音)で条件付けトレーニングをしている場合
- 条件付けが十分にできていない
- 擬陽性反応を反応として捉えている
- 時間を有効に使用できていない(閾値から離れたレベルの測定に時間を割いてしまっている)
- 防音室内にいる保護者が音の手がかりを与えている(音が呈示されると動くなど)
- 子どもが正常聴力であることを願ったりなど、検査者の偏見 

  • 検査の途中でうまくいかなくなった場合は、条件付けトレーニングを再度行う、検査音やトランスデューサーの変更、代替えの評価手段(他覚的検査)などを検討します。

 

 

 

標準データ(正常)

インサートイヤホン(BSAガイドライン)

 


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音場(BSAガイドライン)

VRAでは、音場において得られた閾値は、成人閾値(0.5~4 kHz)よりも 10 dB高いとの報告があるため、最低でも25 dB HL(成人閾値15 dB HL相当)まで検査することが必要です。

BSAガイドラインでは、25 dB HLを正常聴力とみなしています。

 

 

 

1. VRAの概要

2. VRAの特長と研究

3. 検査の準備

4. 検査の実際と標準データ

5. 参考文献